水質調整

 醸造水がビールに与える影響はぼんやり知っていた。日本の水は軟水で、ペールエールの生まれたバートンオントレントは硬水とのこと。軟水の方が淡色ビールに適しているらしく、硬水の方が濃色ビールに適しているらしい。それくらいの情報しか知らなくって、どんな物質が軟水と硬水を決めるのか、その結果がビールにどのようなに影響するのか詳しく知らなかった。

 今まで仕込みには水道水を使ってきた。水道水で仕込んだってデキは悪くないし、これ以上お金かけたくないしな~とか思っていたのだが、kotori brewingさんのブログで水質調整しているのが楽しそうで影響されてしまった。さあ、勉強勉強。

 勉強で使ったのは、beersmith。ここの英語はわかりやすい。

beersmith.com

 

醸造に影響する成分は以下の6つ。

・Carbonate and Bicarbonate (CO3 and HCO3)

 マッシングに影響する。CO3が少ないとマッシュは酸性に傾く。濃色モルトを使うときになる。CO3が多いと、マッシング効率は悪い。推奨は淡色ビールでは25~50mg/L。濃色ビールでは100~300mg/L。HCO3と一時硬水は煮沸により減らすことができる。

 

・Sodium (Na)

 ビールのボディとマウスフィールに貢献する。入れすぎると、海水フレーバ(?)になる。ナトリウムは通常10~70mg/L、150mg/L以上のレベルでモルトボディを強化できる。しかし200mg/Lを超えるとだめ。

 

・Chloride (Cl)

 塩化物はナトリウムに似ていて、少ない濃度でマウスフィールとビールの複雑さを増す。入れすぎると医薬品のようなフレーバになってだめ。通常150mg/L以下。200mg/L超えるな。カーボンフィルターを使うか、20~30分の煮沸で減らすことができる。

 

・Sulfate (SO4)

 SO4はホップを際立たせる。また、マッシュのPHを下げる。しかしその効果はCO3より低い。高いSO4は収斂味(エグミ)をつけるのでだめ。通常、ピルスナーで10~50mg/L、エールで30~70mg/L。ビエナやドルトムンダースタイルでは苦みを強化するため、100~130mg/L。バートンオントレントペールエールは500mg/Lと高い。

 

・Calcium (Ca)

 Caは永久硬水の要因。Caはたくさんの役目を持つ。マッシング時にPHを下げる、ボイル時にプロテインを沈下させる、ビールの安定性を強化する(?)、イーストの栄養になる。Caは50~150mg/L。

 

・Magnesium (Mg)

 Mgは少量でイーストの栄養になる。また、Caと一緒に水の硬度を決める値となる。10~30mg/L。30mg/Lを超えると、ドライ、収斂味、サワー、ビターになる。

 

以上。

 なるほど~。そんじゃ、醸造水に入れてみましょう。って、いったいどうすれば上記のイオンたちを水に溶け込ませるのか?いろいろ調べて、以下のソルトをそろえればよさそう。

 

・石膏 /Gypsum(硫酸カルシウム)CaSO4

 アドブルキットには必ずついてきていたね。ブリューランドでも買える。

・融雪剤(塩化カルシウム)CaCl

 ホームセンターにあるかなと思ったらなかった。地元の北海道だったらあるんだろうな。通販でなんとか入手した。

 ※追記:通販では食品グレードのCaClを購入。融雪剤は安いけど食用じゃないので回避した。

重曹(炭酸水素ナトリウム)NaHCO3

 ベーキングパウダーとしてお菓子売り場にあった。物によってはNaHCO3+砂糖みたいなのも売っていたので、よく見る必要がある。

・塩(塩化ナトリウム)NaCl

 これは、どこにでもある。

・にがり(塩化マグネシウム)MgCl2

 健康食品コーナーに「にがり水」ってのあるんだけど、純粋なMgCl2はなかなか売ってない。通販で入手。買ってから気付いたんだけど、Mgを追加することってあんまりない・・・。Clは他のもので補えるし。

あと、下記は身近なところで探しているけど手に入ってない。特にいらないと思うが探しておきたい。

・エプソムソルト(硫酸マグネシウム)MgSO4

・チョーク(炭酸カルシウム)CaCO3

 

 次は、どれくらい入れたらいいんだろう?高校や大学で化学を専攻していた人は楽勝なんだろうけど、自分はちょっと苦労した。まあ計算しなくても、ツールは落ちているからそれ使うのがいいだろう。こことか。

Brewing Water Chemistry Calculator - Brewer's Friend

 

 自分は以下のようなエクセルを作った。Waterに使用する全水量を入力、Local water profileの行に地域の水道水に入っているイオンを入力。これは水道局にメールして聞いた。そして添加したいソルトをgで入力するとそれぞれのイオン量(mg/L)を出してくれる。

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 計算式だが、NaClを例に説明すると、NaClはNaとClで出来ている。Naの物質量(mol)は23、Clは35.4。NaClは23+35.4=58.4。例えば1Lの水に1gのNaClを混ぜるケースで考えると、1gのNaClは分子の数で言うと1g/58.4 = 0.0171 g/mol個のNaClということになる。その個数のNaClが水の中でNa+とCl-の1:1で分離するので、それぞれのイオンの質量はNa+=0.0171 * 23 , Cl-=0.0171*35.4 ということだ。あとは単位をmg/Lに直す。

 

Cl-   =1g/58.4 * 23 * 1000 / 1L = 393.37 mg/L

Na+ =1g/58.4 * 35.4 * 1000 / 1L = 606.63 mg/L

 

 注意するところは、石膏はCaSO4と思っていたら、実際にはCaSO4・2H2Oだったりすること。投入するソルトの正確な情報が必要。

 

 以上