前回の続き。
今回は、自分が推測した一番搾り製法にたどり着くまでの軌跡を紹介する。正解かどうかわからないし、自分の軌跡なんていらないだろうと思うけど・・・。
キリンビールの「一番搾り」が、本当に一番搾り麦汁だけで仕込まれているという前提でこの製法を考えたときに、まず自分が思いついたのがBIABだ。初めからボイル前水量でマッシングをして、マッシュを引き上げれば、その麦汁は一番搾りといえるのではないか?という発想だ。しかし大手のバッチサイズはホームブリューの比じゃない。どうやってその大きなバッグを準備するのか?もしバッグが準備できたとしても、そのバッグを引き上げる特殊な装置が必要で、一番搾りのためだけに投資するのか?などの疑問にぶつかった。ここで前提条件を一つ追加することにした。「特殊な設備は使わない」という条件だ。
そうなるとマッシングは普通の水量で行うことになり、麦芽100gに対して水250ml前後のマッシングだ。これでは一番搾りウォートが少なすぎて、ボイル後のウォートは糖度が高すぎる。じゃあ「一番搾り」==「一度濾すだけ」という論理で、ロイターリング時に湯量を追加して、一番搾りを大量に絞るということも考えたが、これも特殊な工程になってしまいそう。
いろいろ悩んだ挙句、モルトがもったいないとか糖化効率とか無視して、濃い一番搾りを水で薄めちゃえばいいんじゃないの?という結論に行きついた。これ以外ないんじゃない?たどり着いたら当たり前のことなんだけど、頭が固いのでこの発想が出るまで時間がかかってしまった。一番搾り製法についてもっと違った想像できる方がいたら教えてほしい。
そんなわけで、今回この製法を試してみる目的は推測の裏付け作業であって、本当に雑味が消えるのか?というのと、本当に1.5倍モルトの一番搾り麦汁だけで所望のバッチサイズを作れるのか?ということを確認することだ。
今回のレシピ
※一番搾り製法を選択しただけで一番搾りクローンを目指しているわけではないことに注意。
バッチサイズ
13ℓ(A=6, B=7)
※Aが一番搾り製法、Bが二番絞り麦汁を追加した通常製法
US 2row 90%
カラピルス 10%
SRM3.9
※モルトは通常の1.5倍を使用
マッシング
シングルインフュージョン 60m
※マッシングは1回でまとめて実施して、以下の2バッチに分ける。
A:一番搾り麦汁+水
B:一番搾り麦汁+二番絞り麦汁
ボイル
A:60
B:70m
ホップスケジュール
A:
Hallertau Mittlefruth 60m 15g
Hallertau Mittlefruth 30m 13g
B:
Hallertau Mittlefruth 60m 17g
Hallertau Mittlefruth 30m 16.4g
IBUs=21.85
イースト
Wyeast 2001 Urquell
まるでキリンビールの工場見学のような写真。左が一番搾り麦汁で右が二番絞り麦汁。
一番搾り麦汁の糖度は、ターゲットの1.5倍だった。2番絞り麦汁はターゲットの0.75倍。ターゲットOGになるように水量を調整すると。。。あれ?一番搾り麦汁が結構あまるぞ?実は、当初の計画ではバッチサイズはA=5ℓ、B=5ℓだったのだが、急遽調整して今回のバッチサイズになったのだ。モルト1.5倍もいらないんじゃないだろうか?
左が一番搾り製法で右が普通の製法。もうこうなるとわからない。右の麦汁の灰汁が多かったかなってくらい。この後、一番搾り製法の麦汁を500~600mlこぼしてしまうハプニングもあったが完成。ラガーなので飲めるようになるのはまだまだ先だが、追って報告したい。
今回の製法のために、一番搾り麦汁の糖度とターゲット糖度を入力すれば、何リットルの一番搾り麦汁と水が必要かを算出するツールを作ったのだが、バグが混じってるようでなんか変な結果が出る。しかし、もう一回使うことあるのか疑問。
以上。
※追記 完成品の感想はこちら