熱処理ビールと生ビール

 日本のビールの定義で、「生ビール」を名乗るためには熱処理してはいけない。熱処理とは、完成したビールを60℃程度で熱する工程のことで、酵母やその他微生物を殺菌し、ビールの品質を長期に安定させる目的がある。それでは熱処理を行わない生ビールは劣化しやすいのかというと、そんなことなくて、高性能なフィルターでイーストや微生物をろ過するため、熱処理しなくても十分な品質を保つことができる。 

 生魚を食べる文化を持つ日本人は、生と聞くと「新鮮」という脳内変換が起きるが、ことビールに関しては生==新鮮の法則は成立しない。生ビールだって古くて劣化したビールはいっぱいある。熱処理したって新鮮なのはある。こんな状況は熱処理ビールの一人風評被害のような気がする。

 というわけで、かつてビールの三大発明と言われた熱処理を少し深堀してみようと思う。

 なんでこんな、熱処理応援記事を書くのかと言うと、こちらの商品を見たから。「復刻特製ヱビス」だ。なんとこのヱビス、熱処理をしているのだ。

 

www.sapporobeer.jp

 さて、熱処理されたヱビスとはどんな味になるのだろう。そもそも、熱処理って味にどのような影響があるのだろうか。サッポロは以下のように宣伝している。サッポロラガービールの説明を引用。

程よい苦みが効いた、熱処理ビールならではのしっかりとした厚みのある味わい

 苦みが効いて厚みがでる?化学的に何が起きているのだろう。文献を軽くあさってみたが、現代ビールは濾過ビールが主流のためか、熱処理による影響を詳しく説明してくれているものは見つからなかった。予想がつくのは、まず酸化が促進されるだろうこと。そして香りの揮発。これらが厚みを出すのか?

 

 なにはともあれ2つのヱビスを飲み比べ。おそらく、原料と仕込工程はまったく同じだろう。違いは、熱処理したかどうかだけだと想像している。熱処理ビールを正確に飲み比べるまたとないチャンスだ。

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 色はまったく同じ。苦みは確かに復刻ヱビスのほうが全体的に尖っている。香りは通常ヱビスのほうが薫る。飲み口は通常ヱビスのほうがジューシーで好きだ。総合して「厚み」という言葉で評価するなら、確かに復刻のほうが厚い。不思議。ただ、前情報もって飲んでるわけで、別々で出されたら絶対わからない違いだと思う(笑)。

 

 サッポロビールのHPをあさっていたら、こんな説明も見つけた。

www.sapporobeer.jp

 

当社の生ビール(非熱処理ビール)は、1次ろ過機と2次ろ過機を通して酵母を完全に取り除いています。
サッポロラガービール(熱処理ビール)は、2次ろ過機を通す代わりに殺菌機を通して瞬間的に熱処理を行い、品質を保証しています。 

 

 あくまでサッポロラガービールの話だが、熱処理ビールは2次濾過していないとのことで、微量に酵母が入った状態で熱処理しているようだ。この微量な違いが「厚み」で現れるのか?いやー面白い。ぜひみなさんも挑戦してみていただきたい。

 

 以上、細かすぎて伝わらないビアラバー日記でした。