ホームブリュー手順(ver201612)

 ビールの美味しさに目ざめて、自分でも作れるのか調べたら、わりと簡単に作れちゃったので、その楽しさを共有しようとブログを開設してみた。

 

 初回となる今回は、自分のビール醸造法(2016年12月版)を手順を追って紹介する。

 2021年版はこちら

 

 

 まずはモルトミル。ビールの原料はモルト。発芽した麦のことだ。そのモルトを挽き割りする必要がある。その機械としてモルトミルというものがある。しかし、モルトミルはけっこう高価(2~5万)なので、ホームブリュワーは試行錯誤で自作している。多いのがコーヒーミルの利用だ。あと、ミキサー。

 自分はどっちも持ってなかったので、精米器を使用している。(精米器を持っている人の方が少ないってツッコミはスルー)

 まずはモルトの計量。

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 モルトはg単位でしっかりと計量する。

 そして精米機にザバー。

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 精米機のメリットは、全自動で大量のモルトを処理できること。デメリットは、挽き割りにならないことだ。本当なら、穀皮を残しつつ潰し割る感じがベストなのだが、精米機は穀皮を削ぐように砕くためこんな状態になる。

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 固い米を精米する機械なので、最弱のパワーでもこれだ。フルパワーなら完全なフラワーになる。フラワーにしすぎると後工程でスタックの問題が出てくる。

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 これを寸胴鍋で煮込む。鍋はステンレスがベストらしい。※訂正 銅鍋がいいとか、ステンレスがいいとか意見が複数あるので消した。

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 水の量は、モルト100gに対して250mlがベスト。鍋の水温は50+α℃にしておいて、モルト投入で50℃になるようにする。ミルやミキサーした直後の粉砕モルトは、熱を持っていることがあるので、その場合は水温に注意すること。また、モルトは投入時にだまになるので、よく混ぜること。

 

 投入後、50℃の状態で30分保持して、プロテインレストを行う。やらなくてもいいらしいけど、ビールの濁りを左右するタンパク質を分解して、酵母の栄養素になるアミノ酸を作る工程なので、時間があればやって損はない。

  30分経過したら、水温を62~69℃まで上昇。その温度で60~90分保持。この工程でモルトの糖化を行う。モルトの中に存在する糖化酵素が、この温度になるとデンプンを糖に分解するのだ。化学って素晴らしい。ちなみに、温度や時間に幅があるのは、それぞれがビールに特徴をつけるファクターになることを意味している。勉強して自分だけのビールを見つけてほしい。

 自分が紹介した50℃30分⇒65℃90分のマッシングは2ステップインフュージョンという方法。伝統的方法にデコクションってのもあるが、ホームブリュワーでデコクションやっている人はめったに見ない。 

 マッシングが終わったら、ロイターリング工程へ。この工程で煮込んだモルトから糖化した麦汁を濾過するのだ。今回紹介するのは、2重バケツロイターを使ったロイターリング。他にも様々な方法があるので、興味があれば調べてみてほしい。

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 写真は、左にコックをつけたバケツ。右に、底に無数の穴が開いたバケツ。バケツと言っても、食品を扱うので漬物樽を使った。

 

 これを重ねる。

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 このままでもいいのだけど、自分は廃棄時の処理とフィルタリングを考慮して不織布をここに被せる。

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 こうすることで、濾しおわった麦芽滓を捨てやすいし、モルト滓が次工程に混ざることを防げる。

 

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 ここにザバーっと煮込んだモルトを入れる。そんでもって、下のバケツのコックから濾された麦汁が出てくるので、それを鍋に戻す。

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 自分は寸胴鍋が1つしかないので、煮込んだモルトを移した後、鍋を洗浄してからこの工程に移る。さて、注意してほしいのが麦汁の清澄度。2重バケツに不織布を張ったって、細かいモルト滓がコックから出てきてしまう。これを極力抑えるために、いくつかの手順を踏む。

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 それは、ホースから出る麦汁をいきなり鍋に入れないで、写真のように1リットルくらいの容器に移して、それをいったん2重バケツに戻す。それを3回くらい繰り返す。そうすると、マッシュが落ち着いて、さらにマッシュ自体がフィルターとなり麦汁の清澄度が高くなる。それから鍋に入れる。

 さらに、2重バケツロイターのメリットについてつけ加える。2重バケツの底にスペースができるので、砂のような濾し切れないモルト滓を損切りできる。これはBIABやファルスボトムを使ったロイターでは得られないメリットだと感じている。

 

 ここら辺の工程は、ちょっとわかりにくいので以下にまとめる。

1.煮込んだモルトを2重バケツにザバー

2.寸胴鍋を洗う (鍋を二つ持っていれば後回し可能)

3.2重バケツから1リットル容器に麦汁を移す

4.1リットル容器の麦汁を2重バケツに戻す

5.3->4の作業を、麦汁が透明になるまで2~3回繰り返す

6.透明になったら2重バケツから寸胴鍋に麦汁を移す

 

 上記が終わったら寸胴鍋にはたぶん4リットルくらいの麦汁が入っていると思う。いわゆる一番搾りだ。ビールを作るにはそれだけじゃあ足りないので、スパージングを行って2番麦汁、3番麦汁を搾り取る。70℃程度のお湯を2重バケツに追加して、上記2~6の手順を繰り返すのだ。自分は最終8リットルのビールを作るために、この時点で12リットルの麦汁を作る。この後の工程で蒸発や欠損で4リットルが無くなるのだ。 

 ちなみにモルトミルの状態が影響するのがこの工程。ミル時にフラワーにしすぎるとこの工程でスタックしてしまい、2~3時間かかってしまう。この工程で時間をかけ過ぎると、麦汁が酸化してしまい味が悪くなると聞いたことがある。

 ちょっと知識がある読者なら、BIABすりゃ時短できると言うだろう。しかし自分は、BIABはマッシング時にモルトの攪拌がやりにくい事。2ステップの再加熱時にBagの焦げ付きに注意しなければいけない事、昇温に水量が多いので時間がかかる事。また、細かい麦芽滓をBagで濾しきれずに、ボイル時にすごい灰汁が出る事をデメリットと感じてこの方法に落ち着いた。まあ、十分BIABでも美味しいビールを作れたので、好みの問題だと思う。

 

 この後、麦汁をグツグツとボイルする。その時間、沸騰してから60~90分。(スタイルによる)

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写真はボイル終了時点。12リットルあった麦汁が10リットルになっている。

 

 ボイル中に、たいてい昼食をとるようにしているが、ボーっと休憩していられるわけではない。ボイル時間に応じて計画的にホップを投入する必要があるからだ。これをホップスケジュールという。

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 ボイル終了を0分として、そこから何分前にホップを何グラム入れるかを準備しておく。ホップの持つ苦み成分 x ボイル時間がそのままビールの苦みに影響するので、いい加減にはできない。写真の右下のメモではボイル終了10分前にカスケードホップを7g入れると書かれている。0mと書かれているホップは、苦みよりもアロマを意識して投入される。

 

 自分はビールの透明度を求めるため、お茶パックにホップを入れるようにしている。しかし、麦汁に均一に混ざることを意識するなら、お茶パックに入れない方がいいのかもしれない。これは自分の改善点。

 ボイルが終わったら、0m投入ホップを入れて15分くらい放置。そして急冷。急冷のやり方もホームブリュワーの工夫のしどころ。よくあるのはウォートチラー(麦汁冷却器)というものを使って冷やす方法。このメリットは限りなく閉鎖系でできるので菌汚染のリスクを下げられること。デメリットは設備コスト。自分は写真の方法をとっている。

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 水を張ったクーラーボックスに鍋を沈めて水を循環させる方法だ。冬なら20分もあれば100℃あった麦汁が目標の25℃まで下がる。夏の場合は、30度から下がりきらないので、消毒したジップロックに保冷剤を入れて麦汁に投入して攪拌するという、菌汚染的にデンジャラスなことやっている。失敗したことはまだないが、これも改善点。

 

 そして、冷却された麦汁を発酵容器に移す。

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 自分は発酵容器として、10リットルストッカーに漬物袋(20リットル1斗用)を張ってこんな感じにする。寸胴鍋の底には固体化したタンパクやホップやモルト滓が沈んでいるので、それらのゴミは出来れば移したくない。その時使用するテクニックが、サイフォン方式。

 さすがにサイフォンしているときに写真は撮れない(やってみるとわかる)ので言葉で説明するが、力学の法則で高いところにある水は低いところに流れていくのはわかるだろうか。それを利用して、高いところの寸胴鍋の麦汁のキレイになった上澄みをホースを使って移すのだ。これに最適な道具として、プロホースという熱帯魚の水槽掃除用の器具がある。調べてみてほしい。寒冷地に住んでいる人なら、灯油を移し替えるポンプをイメージするとわかりやすいかも。

 

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 こちら、サイフォンの後の、鍋底に溜まった滓。汚いが1リットル近くある。えー。捨てるのもったいない。という自分みたいな方はこの麦汁を上部を切り開いたペットボトルに入れて、沈殿するのを待つ。

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こちら沈殿前。

 

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 そこから30分待った後の麦汁。上部は澄んでいて、まだまだ使える。この上澄みを発酵容器に移し入れる。

 

 さて、麦汁を発酵容器(漬物袋)に移し終わったら、ビール酵母を入れる。ビール酵母は、麦汁の糖分を食べて二酸化炭素とアルコールに変換する。しかし、そのまえに酵母自身が元気になる必要がある。元気になるのには酸素が必要なのだ。そのため、酵母を投入したら麦汁をエアレーションする。要はシェイクするのだ。

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 こちらの写真はエアレーション前。これを左右前後、5分間ふりふり。容器の底を片方浮かせてフリフリするのがいいだろう。

 

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 エアレーション後。これを30分後にもう一回繰り返す。先の写真にあった、汚麦汁の沈殿が終わったころに、麦汁の上澄を追加して再度エアレーションするのがいいだろう。

 これで仕込み終了。だいたい7時間くらいかかるかな。常に、消毒や清掃をしながら上記工程を進めるので、あんまりゆっくりできない。良く思うが、これは単なる仕事だ。

 

 発酵がうまく進むと、半日後にこんな感じ。

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 イーストが糖を食べてアルコールを作るときに生じた二酸化炭素で、袋がボンボン。あまり口をきつく縛ると破裂するので注意。(破裂したことはないが、写真のように先のとがった温度計を指しているので、そこに穴が開いたことがある。)

 

 エールの場合、この状態で4~7日。そしたら2次発酵容器に移して、そこからまた7日。その後瓶詰。瓶詰工程は、また後日に記事にする。こんな長いブログ書いたの初めてなんで眠い。

 

 ビール造りの楽しさを伝えられたらと、しばらくこのブログで頑張ってみる。