BIAB(Ver201608)

 オールグレインによる醸造は、ホームブリュワーにとってなかなか骨の折れることだ。麦芽を糖化させるマッシング、糖化エキスを濾すローターリングとスパージングという工程が必要になる。場合によっては麦芽を砕くミリングの工程も加わり、仕込み時間の増加と醸造道具の壁がホームブリュワーの前に立ちはだかることになる。

 その壁を破壊したのがBIABという醸造方法だ。Brew In A Bagの略でBIAB。マッシングとローターリング、スパージングを同時に行う方法で、醸造道具も手間も極めてコンパクトにすませることができる。

 BIABでググれば、やり方を教えてくれるホームブリュワーさんはたくさん出てくるだろう。自分が勝手に師匠と思っているKotori BrewingさんもBIABの使い手だ。

 今調べたら、アドブルでBIABキットが出ていた。作り方もしっかり記載されていた。

BIABフルマッシングキット_アドバンストブルーイング

 

 そんな自分も、BIABは3回ほど試してみた。今回はその時の話を載せておく。先輩たちの補助情報として何か参考になればと思う。

 自分が使った袋は不織布の2枚重ね。不織布は力かけたら簡単にやぶれるので2枚重ねてみた。不織布はモノタロウで購入。

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 通常のマッシングは麦芽100gに対して、水250mlが相場。しかしBIABはボイル前の水量でマッシングする。自分の完成8L仕込みの場合、ボイル前は12Lだ。水量が多い。温度コントロールに時間がかかる。

 そして大きな問題は、不織布は熱に強くない事。恐らく手に入るのはポリプロピレンの不織布だ。ここをみると150℃程度で軟化/融解するとのデータがある。水温は100℃は超えないけど、鍋底に触れるところは絶対150℃を超える。プラスチックの溶けだしたビール・・・。考えるだけでも恐ろしい。

www.asahi-kasei.co.jp

  てなわけで、不織布を持ち上げたまま昇温する必要がある。重さで腕がプルプルする。この問題は不織布を使わず、布地のバッグを使うとか、不織布を持ち上げる道具をDIYするとかで解決するだろうから、BIABで行く人はがんばってほしい。

 また、マッシング中は定期的にマッシュを混ぜた方が良い。BIABだと不織布が邪魔になってうまくできなかった。これは慣れだと思う。

 

 マッシングが終わったら不織布を濾して捨てる。これが大変。なかなか水が切れない。不織布を持ち上げたらザルみたいにザバーなんて切れない。そして、昇温の時以上に不織布を上に持ち上げる必要があるので、腕プルプルするどころの話ではない。アドブルの手順にあるように大きなストレイナーで濾すのがいいのだろう。自分は持ってないし買うのも嫌だったので、考えた方法がこれ。100均で売っているワイヤーネット。この上に乗っけて放置した。

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 ちなみにこのワイヤーネット、シンクにかけて瓶を逆さに干すために抜群に便利だ。

 

 濾し終わったら、後は普通の醸造工程と一緒。

 ただし、目の細かい不織布を2枚重ねたって、細かいモルト滓が麦汁に入ることは覚悟しておいた方がほうがいい。それが原因かどうかはわからないが、灰汁がすごく出る。

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 以上が自分のBIAB時の体験談。

 完成品の味が悪かったり、極端にヘイジーだったりってことは無かったが、今はBIABをやっていない。その理由は、マッシング時の温度コントロールに手間がかかるのだ。マッシングはスタイルに合わせてやり方を変えたい。62~69℃の細かいステップだってコントロールしたい。あの水量とバッグを持ち上げながらの昇温はめんどい。あと、ボイル時の灰汁の多さ。モルト滓は極力ボイルしたくない。

 最後に、 自分のBIABによるマッシュ効率は70%というところだった。最近の2重バケツロイタータンを使った方法では80~90%。何にせよ、自分の気に入ったやり方を見つけて極めることが重要だと思う。

 

以上。