ジアセチル

 ジアセチルって、オフフレーバの代表的な物質だけど、よくわかっていない。イーストが出すけどイーストが再吸収するよとか、ぼんやり聞きかじっていただけ。ちょっと興味が出てきたのでいろいろ調べた。以下、自分が調べて納得いったものを記載する。自分が実証実験を行って、これが正しい!と証明したわけでないことに注意されたし。参考にしたHPはたくさんありすぎるが、以下代表的なとこ上げておく。

Brew Your Own | The How To Homebrew Beer Magazine

Welcome to How to Brew - How to Brew

他にもいろいろな所つまみ読みしていたがどこだか忘れた。

 

 ジアセチルはVDK(ビシナル・ジケトン)と言われるものに分類され、ビールのオフフレーバとなる。ジアセチルは2-3ブタンジオンとも呼ばれる。2-3ペンタンジオンもVDKだ。VDKは発酵初期に形成される。イーストは酸素を吸って自己増殖を行うのだけど、バリンやロイシン等のアミノ酸を形成する経路でアセト乳酸を作り出し、こいつが酸化的脱炭酸分解でVDKに変化してしまう。しかし、イーストはVDKを還元する能力を持っていて、ジアセチルを再吸収して2-3ブタンジオールやアセトインに還元する。名前が似ている2-3ブタンジオールは無臭らしい。これが熟成のメカニズムの一部。

 此処まで読んでいて疑問に思ったのが、ジアセチルがαアセト乳酸の酸化的脱炭酸分解なら、エアレーションで麦汁に酸素を混ぜるのってジアセチル生成を助けていることになるの?という疑問。辿り着いたのは、イーストの好気呼吸と嫌気呼吸のメカニズム。イーストを元気にするためには好気呼吸時の酸素が必須。元気じゃないとジアセチルの還元も出来ない。だからエアレーションは必須。ただし、ウォートが熱いうちにエアレーションすると、麦汁が酸化してしまうので、麦汁と結合した酸素は好気呼吸フェーズでは消費されずに初期発酵が始まってしまう。酸化酸素はやがて分離してジアセエチル生成の助勢となってしまう。というわけで、エアレーションをやるのは正しいけど、酸化には注意ってことで納得。ちなみに別な話だが、αアセト乳酸は酸素がなくても酸化的脱炭酸分解してジアセチルになるらしいが、酸素があるともっとしやすいとのこと。

 ジアセチルができる条件はLow PHと高温。だから発酵初期は低い温度ですることが望まれる。イーストの活動許容温度の下限を狙うのがいいだろう。Low PHの閾値はまだ見つけられていない。

 そんでもって、ジアセチルレストについて。ジアセチルレストは出来たジアセチルをイーストによって還元させるんだけど、それを促進させることを言う。熟成期間中に還元させるのだろうと思っていたら、そうじゃなくて初期発酵の後半に行うとのこと。ジアセチルレストは温度を高くして1~3日くらい放置する。あれ?温度高くするとジアセチルがよりできるんじゃね?と思が、αアセト乳酸の生成が好気呼吸フェーズなので、初期発酵前半は低温で後半は高温で行うという発酵テクニックはここからきているのだろう。納得。後半というのがいつかというと、発酵が2/3~3/4終わったところから。そんで、ジアセチルレストの温度は18℃。ラガーにとってはかなり高温だ。エールの場合はどれくらいの温度にすればいいんだ?と思ったらエールも18℃だ。衝撃の事実なんだけど、要するにエールはジアセチルレスト期間を気にしなくていいってことだ。 

 

まとめると、

・エアレーション時は麦汁の温度をしっかりと冷やす(25℃以下)。

・発酵初期は温度低めで。

・ラガーはジアセチルレストのため発酵3/4~2/3終わったら18℃に昇温して1~3日キープ。

・エールはジアセチルレストを気にしなくていい。

 以上。