タイトルの「Trinktemperatur」はドイツ語で飲み頃温度。夏休みに入ったので、ヴァイツェンのサービング温度を深堀してみることにした。
元ネタはこちら。日本と海外でのヴァイツェンの推奨温度が違うことに気づいた記事。
イースト培養最終章と2017/7Eの戦績と - homebrew diary
話は変わるが、美味しく飲むためにヴァイツェンのサービングの適温を調べていたら、日本とUSで差異があることが分かった。日本の著名なビール評論家やビールを取り上げているサイトは、口をそろえて9~13℃を推す。しかし、USのサイトを見ていると推奨温度が4~7℃で、ピルスナーレベルの低温を推奨している。9~13℃を推奨する記事もあるが低温推奨の方が多い。ペールエールはだいたい同じなのにヴァイツェンは日米で飲み頃が違うのだ。
さて、日本とアメリカとドイツで、「ヴァイツェン 適温」でググってみた結果をまとめてみた。調査ルールとして、比較対象としてペールエールの適温も採取することにした。また、ウィートビールでひとまとめにしている場合は、ヴィットとヴァイツェンの区別がつかないので除外すること(USのサイトはそのパターンが多かった。)あと、ヴァイツェンには種類がある。検索した結果で各種ヴァイツェンの温度が個別に出てきた場合はヘーフェヴァイツェンの情報を採取することとする。
以下に調査情報のサマリを報告。
日本 著書A ヴァイツェン:9~10℃ ペールエール:10~12℃
日本 サイトB ヴァイツェン:10~13℃ ペールエール:?
日本 サイトC ヴァイツェン:10~13℃ ペールエール:10~13℃
日本 サイトD ヴァイツェン:10~13℃ ペールエール:10~13℃
日本 サイトE ヴァイツェン:5~10℃ ペールエール:?
日本 サイトF ヴァイツェン:10~13℃ ペールエール:?
日本 サイトG ヴァイツェン:10~13℃ ペールエール:?
日本 著書H ヴァイツェン:10~12℃ ペールエール:?
US サイトI ヴァイツェン:4~7℃ ペールエール:12~14℃
US サイトJ ヴァイツェン:8℃ ペールエール:8℃
US サイトK ヴァイツェン:9~12℃ ペールエール:10~13℃
US サイトL ヴァイツェン:7.2~10℃ ペールエール:10~12.8℃
ドイツ サイトM ヴァイツェン:8~12℃ ペールエール:?
ドイツ サイトN ヴァイツェン:7~9℃ ペールエール:7~9℃
ドイツ サイトO ヴァイツェン:7℃ ペールエール:9℃
※それぞれのサイトや著書の詳細について知りたければ、連絡いただければ教える。
ヴァイツェンの適温平均を出してみた。
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日本 10.5℃
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US 815℃
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ドイツ 8.33℃
ペールエール適温平均はこちら。
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日本 12.17℃
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US 10.97℃
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ドイツ 8.5℃
こうしてみると、日本の推奨適温が基本的に頭一つ高い。この結果をみると、温度に対する感覚が基本的に違うの?日本人ってそんなに高温好きなの?って思ってしまう。それじゃ、ブリュワリが勧める適温はどうなんだろうと調べてみる。
日本 常陸野ネスト ヴァイツェン:6~9℃ ペールエール:10℃
日本 箕面ビール ヴァイツェン:10~12℃ ペールエール:12~14℃
日本 南信州ビール ヴァイツェン:5~7℃ ペールエール:?
ドイツ ヴァイエンシュテファン 6~7℃
ドイツ パウラーナ 6~7℃
ドイツ PARK 6~7℃
ドイツ Tucher 7℃
Hefeweißbier - Unsere Biere - Weihenstephaner - Die älteste Brauerei der Welt
※ヴァイツェンのおひざ元、ヴァイエンシュテファンが勧めるんだから、もう言うことは何も無い。
ブリュワリの推奨温度は箕面を除くと平均7℃。標準偏差も極めて0に近い。となると、やっぱりヴァイツェンの適温は7℃と考えていいんじゃないかな。日本の各種サイトが勧める温度は、少し高い気がする。
さて、Trinktemperaturがビールに与える影響について調べてみた。基本的にある物質の臭いは、その物質が揮発する温度に近ければ近いだけ強くなる。だけどビールに関していうならば、CO2の放出がアロマに強い影響を与える。水温が上がれば上がるほど、液中のCO2が空気に放出され、合わせてアロマもつれて行くということだ。水温と残留CO2の話は以前もしたので、そちらも参照。
GVとプライミングシュガーの計算 - homebrew diary
そう考えたら、あえてGVを強めに作った上で、目の前で揮発させることによるアロマ&フレーバーの提供ってサービングスキルもあるのかなって思った。ちょっと加速係数が難しそうだが。
長くなってしまったが、そろそろまとめ。
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日本の各サイトや著書のヴァイツェンのサービング温度は高い。平均10℃。実際にブリュワリーが推奨する最適温度はもう少し低くて7℃。
なぜそうなったかの推測だが、ヴァイツェンに数々の種類があることと、日本の閉塞的なビール環境が原因じゃないかと考える。調査を進めると、アルコールの高いヴァイツェンボックの適温は10℃に近い。ピルスナー一辺倒の日本に、本当のビールの世界を浸透させるべく、先人たちはわかりやすくまとめることに専念した結果、何かの手違いでヴァイツェンボックの10℃近い適温が推奨されてしまって、そのままコピペが続いているのじゃないかと考える。ビールはそんなに画一的な飲み物ではない。とても繊細で、スタイルとスタイルの境界は紙一重だ。その認識がない日本のビール業界に切り込んでいる先人たちの苦肉の努力の結果がこれなのだと感じる。
また、日本のブリュワリは、自分が作るビールの適温についてもう少し気を配ったほうがいい。なかなか適温を表示しているメーカーが見つからなかったのは残念だ。南信州ビールは夏と冬で推奨温度を分けていて感服した。
以上。