ビールの色

 ビールの色度について、勉強しなおした。

beersmith.com

 

 ビールの色の歴史は、1883年にロビボンド氏によってロビボンド(L°)が定義された。この時の方法が、コンパレータによる目視確認。その後1950年に、分光測色法を使ったSRMがASBC(American Society of Brewing Chemists)によって定義される。分光測色法というのは、色の吸光度によって物質の色を測定する方法で、SRMの定義では430nmの波長の光(青と紫の間)の吸光度で測定される。

 ビールの色はSRMで表示されることが一般的だが、なぜだかモルトはLovibond表記が多い。まぁ、モルトスターに対する要求としては、分光光度分析機器を購入してコングレス麦汁から正式なSRM割り出すことよりも、品質の良いモルトを作ってくれってことなのだろうからしょうがないか。実際、LovibondとSRMにはそんなに乖離がなかったらしいし。

 

 LovibondからSRMを導くためには、変換式を使う。それがこちら。

 SRM=1.3546×L° - 0.76

 これをグラフであらわすとこちら。横軸にLovibondで縦軸にSRM。Lovibondに対してSRMのほうが若干高くなる。

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 これで導いたSRMを使ってPound/Gallon計算をすれば、ビールのSRMが出るのかと思うのだが、これが簡単にいかない。なぜなら吸光度というのは以下の式でわかるように、指数関数的に変化していくのだ。 

入射光強度 I0  透過光強度 I

  人間の目には、濃くなるほどその違いが判らないということになる。ロビボンドさんは頑張ったのだけど、濃色に関しては誤差が往々に含まれていたということだ。PPG計算はLovibond=6~8以下の場合でしか使えないらしい。

 

 そこで出てきたのがMorey方程式。これを使えばLovibond=50まで、LovibondをSRMに変換できる。

 

SRM = 1.4922 * (MCU ^ 0.6859)

MCU=  (Weight of grain in lbs) * (Color of grain in degrees lovibond) / (volume in gallons)

 

 こちらのグラフが、単純変換式を使ったSRM値と、Morey方程式を使ったSRM値の比較。横軸は先ほどと同じくLovibond。

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 Lovibond=5くらいから交差して乖離していくことがわかる。

 

 もう少し深堀をして、ビールの色度分析法も少し調べてみた。参考にしたのはBJOCビール分析法。方法は目視法と吸光度法の二つがあって、目視法はコンパレータを使い、吸光度法は分光光度計を使って430nm波長の単色吸光度を調べる。自分で調べたこととほぼ同じことが書いていた。しかし、面白いことも分かった。 両方とも測定時には濁りを完全にとる必要があるとのこと。珪藻土フィルタや遠心分離機でしっかり透明にしてから測定するらしい。だから濁り系ビールを見てSRM当てるって、ありえない話なのだ。

 

 ここまで、つまみ食い調査した結果をダラダラ書いているが、納得いかないことがたくさんある。モルトスターだって大きな企業なのだから、絶対に分光光度計を持っているはずでSRM or EBC値を計測するはずだし、ロビボンドさんだって賢い人のはずだから、濃色は判断できないことなんてすぐわかって、希釈して測定するはず。そうしたら誤差はそんなにないはずじゃ?とかいろいろ。

 

 最後BeerSmithに面白いこと書いてたんだけど、分光光度分析は430nmの単光で吸光度を測っているんだから得られる情報に限界があるってこと。実際のビールはSRM定義では得られない色を表現できることをアイリッシュエールを例に説明していた。たしかにねー。あんなに不思議な赤ってSRMだけでは表現できないよね。

 

 なるほどねー。とか納得して、発散しそうな課題を無理矢理クロージングしようと思っていたら、最近は三刺激値による測定も導入されつつあるとのことで、ビールの色フェチとしたらワクワクしちゃう。これは追加調査が必要そうだ。

Standard Reference Method - Wikipedia

 

 色は奥が深い。