グルコシダーゼを使った醸造(1)

 α-グルコシダーゼを入手したので、それを使った醸造に挑戦。その前にグルコシダーゼのお勉強をしたので、ざっと記録しておく。いろいろ間違っているところがあると思うので、そのつもりで読んでいただければ。

 

 α-グルコシダーゼとは、グルコースとのグリコシド結合を加水分解する酵素。複雑に結合した糖を食べやすい単糖に分解するのだ。アミラーゼとの違いがよくわからないので親戚と思うようにするが、どうにも彼らとは違った面白い働きをするようだ。この酵素を使うことで、お酒のボディを強めることも、弱めることもできるというのだ。

 

 どういうカラクリなのかと言うと、α-グルコシダーゼは、麦汁に触れると糖転移活性し、マルトースからイソマルトオリゴ糖を生成する。イソマルトオリゴ糖は複雑な糖で、もちろん酵母は食べることができない。この性質を使ってボディの強いビールを造ることが可能になる。しかし、α-グルコシダーゼは糖を切断する性質をもっているため、しまいにはそれらの複雑な糖も分解して、ブリュットIPAのようにキレキレな状態にすることも可能なのだ。

 要するに、マッシング時に投入してボイル時に失活させればボディ強化。発酵時に投入すれば低比重化ができるのだ。

 

 この論文α-グルコシダーゼを利用したビールの高濃度醸造 (第1報)は面白い。高濃度醸造時の高比重による酵母への影響を抑えるために、ボイル後麦汁をチルしてからα-グルコシダーゼを投入し、糖組成を変換することで、酵母にとってストレスのない発酵環境を作れると報告している。酵素の力を使って一度多糖に変換してから緩やかに分解することで酵母が楽になるとのことなんだけど、自分の感覚的には糖の量が変わってないから酵母が苦しいのは変わらない気がするのだが、そういうものではないらしい。醸造の世界の深さ・・・しびれるぜ。

 

 ほかに調べたことでは、ブリュットIPAが流行ったときによく聞いた「グルコアミラーゼ」との違い。その酵素は別名アミログルコシダーゼで、やっぱり親戚なんだろうけど、こいつは糖転移活性が起きないので、ボディ強化の性質はなくて、とにかくチョキチョキ糖を細かくすると覚えた。

 

 次は、α-グルコシダーゼを使って実際に醸造してみる。できれば上記に記した性質をこの目で見届けたいので、「酵素なし」「マッシング時投入」「発酵時投入」の3バッチ同時仕込みで進めることにする。

 

 続く。

 

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