小麦粉を使った醸造

 今年の春はWyeast 3944を使ったベルジャンヴィットに挑戦中。ホワイトエールは年中造っているけど、正式なヴィットを造るのは久々。
 自分の小麦醸造の歴史は長い。ヴィットに取り組もうと、初めてレシピを調べたのは2017年頃だと思う。レシピに出てきた『Unmalted Wheat』には、それはもう戸惑ったものだ。麦芽化していない小麦を探すところから初まり、硬すぎる小麦玄麦との戦いののちに行きついたのが、小麦粉というゴールだ。今日は自分の小麦粉を使った醸造方法を共有する。

 まず小麦粉の種類。使うのは薄力粉だ。強力粉との違いはたんぱく質グルテンの量。強力粉の方がタンパクが多くて、こねると弾力が出てパン造りに使用される。ビールにたんぱく質は不要なので、ここは迷わず薄力粉だ。

 使うのは道産高級小麦。

 この小麦を50%程度使用する。オーツも入れる。醸造前はこんな感じ。

 このまま寸胴に入れて水を入れるとダマになるので、入れる前に良くかき混ぜて粉砕モルトとなじませておく。

 小さなダマはできるので、水を投入後に良くかき混ぜてダマをつぶす。

 まるでシチューのような写真。

 マッシングはいつも通り。小麦醸造の時はロイターからが大変。マッシングと並行して、スタック防止のためのもみ殻を準備する。

 重量は全モルトの5%程度。また、食品グレードで売っているものじゃないので、農薬などが付着している可能性も考えてしっかり煮沸消毒する。

 綺麗に洗ったもみ殻をマッシュに混ぜ込み、76℃まで上げてマッシュアウトさせる。

 ロイターの開始。この一番搾りを見てくれ。泥じゃないぞ。

 さてここからが本番。一番搾り用の小鍋を準備する。

 これをそのまま醸造には使わない。メインの寸胴で2番麦汁をひいている横で静置して沈殿させる。沈殿させた写真がこちら。

 この上澄みだけをメイン寸胴に戻して、2番麦汁を追加する。というのを3番4番と繰り返す。そうすると、一番麦汁を汚していた小麦粉を分離しつつ、マッシュ効率を下げずに次の工程に進める。
 こちら2番麦汁を追加後に沈殿させた写真。

 1番麦汁の沈殿後は雲のように沈殿しきらなかったのは、麦汁の比重が高いからである。比重が下がってくると、しっかりとキレイに沈殿するようになる。

 こちらスパージングの終わったモルト滓。泥まじりみたい。

 最後、ボイルが終わった写真。結構な濁りだよね。小麦醸造だからこんなもんだよね。あと、11ℓ醸造でこの時点で10ℓというのもテクニックの一つである。理由は後述。

 サイホンで吸いきれなかった残り。いつも2リットルくらいある。

 これを沈殿させる。

 この時に、足りなかった1ℓの水を追加して比重を下げつつ沈殿させてを繰り返すのがミソ。やはり比重を下げるとキレイに沈殿するのである。

 最終的に捨てる滓はこちら。

 これらを行うことで、小麦カスの混入を防ぎつつ85~90%のマッシュ効率で醸造できるようになった。醸造時間は普通のモルトと同じく7時間。

 さて、今日瓶詰をした。色は最高にいいね。ホワイトエールのこの色は、何度造ってもたまらん良い色。

 味は、モルト感が薄くてマイルド且つ旨味もありGood。やっぱ日本人には小麦ビールが絶対合うと思うんだよね。あとはイーストとホップの組み合わせ。日本人にハマる、お世辞抜きにウマいエールを絶対造ってやる。


 以上、小麦粉を使った醸造を紹介したが、まぁ、勧めない。いまだに大変だし、醸造が安定するまで数年かかったから、初挑戦となるとすっげー大変と思う。