Re発酵タンク

 俺の発酵タンクは漬物袋。プラスチックカーボイも持っているけど、洗うの大変だからって漬物袋を使い始めて幾星霜。やがて漬物袋以外の発酵設備の存在を忘れたある日、醸造仲間から一通のメールが届いた。「これ要りませんか?」

 この写真をぼんやりと観て、自分は何を見せられているのかと悩んだ。底に穴がある。横にも穴がある。しばらく考えて出た答えは何ともボケていた。「ワールプール用のタンク?」と。

 そうこれはコニカル発酵タンク。そんな設備がこの世にあったことを思い出した。しばらく考えて「貰います」と回答した。理由は、最近の自分の醸造スキルの閉塞感を打開するアイテムのような気がしたのだ。

 このタンクを使いこなすために一番に解決すべきことは温度管理方法。見ての通りチラーがついているので水冷システムを構築するのがベストだろう。しかし、今までの「ワインセラーに放り込んで終わり」の環境と違いすぎて面倒そう。大きいワインセラーを買うか?醸造仲間が勧めてくれた冷蔵ショーケースも安くてよい。と、いろいろな商品の内寸を観ていたらあることに気が付いた。ワインセラーの背面に穴が2つ開いているのだ。知っている人には常識なのだろうが、ワインセラーには外気の湿度を取り入れるための小さな穴が開いているのだ。
 もちろん我が家のワインセラーにも開いていた。



 筒を抜いた穴に外径8mmの銅管がぴったり差し込める。これなら今あるワインセラーにわずかな細工で水冷システムを構築できるじゃないか!つまり、ワインセラーで冷水を保管してワンセラー外部の発酵タンクに冷水をポンプで循環させる。

 庫内の背面との仕切り版は薄いプラスチックなのでドリルで簡単に穴をあけられた。背面から銅管を差し込んでスプリングベンダーで曲げる。

 冷水は10ℓもあれば良いはずで、余白で3ガロンケグを冷やすことも可能。これで夏に醸造しながらケグの冷却も可能になった。ストッカーのふちがボロボロなのはワインセラーの扉が閉まらなくなったので、半田ごてで取っ手を溶かし切った。
 
 タンクはスタイロフォームで保温庫を造り、ワインセラーと保温庫をチューブでつなぐ。

 温度コントローラにポンプをつないで、温度が上がったらワインセラーの中からポンプで水を循環させる。ポンプは水槽用の小型ポンプ。

 このシステムで初めて醸造したのはケルシュ。16℃ターゲットで17℃で冷却システム稼働の設定で開始。スタイロフォーム保温庫は優秀で、室温20℃の空間で1日2~3回のポンプ可動で済んでいる。ポンプも静かで同居人からの騒音クレームもなし。それよりも水冷システムの水漏れを心配されて、ことあるごとに小言を言われる。まぁ2階から10ℓの水漏れは勘弁だわな。洗濯機パンを準備する予定。

 真冬のエール醸造は加温が必要なので、その場合は電熱線ヒーター。電熱線は温度が上がりすぎないように制御されているので、リードスイッチをちょん切って半田で銅線をつないで完成(自己責任でどうぞ)。発酵タンクに巻き付けて10℃以下の水温を30分程度で15℃にできたのでばっちり。



以下買ったものリスト

  • スタイロフォーム1枚
  • 銅管1メートル
  • 銅管カッター
  • シリコンチューブ2m
  • 13リットルストッカー(冷水保管用)
  • 水中ポンプ
  • サーモスタット温度コントローラー
  • 水道凍結防止帯3m
  • 洗濯機パン

 久々に醸造設備を更新して疲れた。劇的においしくなることはないだろうけど、よけいなコンタミと酸化の防止にはなるだろう。

 以上。