ホップの勉強

 ホップの勉強のやり直しを始めたのは、IPAのイマイチな出来を何度も経験した昨年の秋口から。週末の空き時間に過去に読んだ論文を含めて整理して読み直し、ようやく自分の醸造計画に反映できるものを得られたので簡単な報告とする。

 まず、論文のリストアップ。J-Stageで『HOP』で引っかかる論文の概要を一つ一つ精査し、醸造に関係ありそうなものをリストアップ。年代別にそれを並べたのがこちら。海外ジャーナルを読むほどの時間と英語力はないので勘弁。

f:id:vvm:20210124190107p:plain

 面白かったことは、年代によってホップに対するアプローチが変わっていくこと。1960~1980に苦み成分としてのホップの性質が解明されて、2000年頃にはα酸含有量の多いホップ品種の開発が進み、ホップ生産量は低下傾向。また、このころはドライホップなどの言葉は出てこず、ホップの精油は煮沸により揮発するとの認識しかない。これが2009年の岸本さんの論文から、一気にフレーバとしてホップの研究に傾倒していく。どの成分がどの香りに影響しているのか?どうすればそれらの成分を有効に扱えるのか?という研究が進む。そしてその過程で、香りが一つの成分で決まるわけでなく、複数の成分によりエンハンスされて形成されるという香りの世界へのアプローチに変わりつつある。たぶん世界的に見ると、日本の研究は5年くらい遅れてるだろうけど、研究の方向性としては共通だろう。また、これらの研究は常にワイン界隈が先行しているという事実も良い刺激になった。今度はワインのジャーナルあさってみるかな。

 さて、一通り論文を読み直してやるべきことが明確になった。それは、ホップの成分表の整備とレシピ構築時の含有量の計算式の整備だ。正直、論文を読んで途方に暮れた。だって、ホームブリュワーがガスクロマトグラフィ使ってホップの成分分析できるわけもなく、弁別閾値を下回る成分が人間の認識できる『香り』を形成するなんてフィールドが広すぎる。自分にできることは、我々ホームブリュワーが入手できるホップのオイル成分の把握とレシピのオイル含量の制御。そして、その成分で造ったビールの評価を何回も繰り返すことだと覚悟した。

 作りたるは、市場に出回っているホップの成分表。

f:id:vvm:20210124194737p:plain

 276種のホップで、わかる限りの情報をまとめてみた。オイルは以下の項目。ホントはチノール系の成分もあったらいいんだけど、その情報を開示してるホップは無い。

ミルセン
フムレン
カリオフェレン
ファルネセン
リナロール
ラニオール
β-ピネン

 
 さらに、使用するホップによってppbでどれくらい入るかを計算できるようにレシピ作成ツールを再整備。まずはリナロールとゲラニオールだけだけど、こんな感じで含量をわかるようにしてみた。煮沸時間の影響などもう少し工夫が必要。

f:id:vvm:20210124200941p:plain

 ここまでは数字が読めればできる話。一番の難関は、出来たビールとこれらの数値の紐づけを俺のバカ舌でやること。何年かかるかわからないけど、最適なホップブレンドを見つけるまでやってみましょう。


以上。