サハリン・ファ―・クベイク(VER202506)

こちらの記事の続き。
しもかわ森のブルワリーさんから頂いた下川町のトドマツを使って仕込んだ報告。

vvm.hatenablog.com

表題の『sakhalin fir』とは『トドマツ』の英名である。
 

 
さて貰ってきたトドマツを眺めながら、どう仕込もうか検討した。
しもかわブルワリーの中村さんからは用法容量をちゃんと聞いていたのだが、それをそのままってのも面白くない。
まずはマツを使った醸造について調べた。

こちらのMika Laitinenさんは北欧のビール醸造の研究をしている人で、こちらの記事は伝統的なジュニパーを使用した醸造から針葉樹全体についての醸造についてまとめている。すげぇ情報量。
https://www.brewingnordic.com/new-nordic-beer/brewing-with-juniper-spruce-fir-pine/
https://www.brewingnordic.com/new-nordic-beer/brewing-techniques-juniper-spruce-fir-and-pine/

使用する部位、量、インフュージョンかボイルか?ロイターの濾過材としての使用など、様々な情報が盛り込まれており素晴らしい記事でした。
これを読んで一番困ったのが、投入量の目安について。投入量はとても大事で、多すぎると松脂のキツイ風味になってしまう。しかし針葉樹は投入する季節によって含有水量が違うので、重量ではなくてざっくりと体積で測るとのこと。
そのため投入量はリットルで表現している。うーん。手持ちのトドマツは何リットルだ?

そういうわけで、まずは醸造方法を決めるために量と処理方法を探ることに。

トドマツの葉と、葉+枝の2種類で、それぞれ80℃スティーピングとボイルを3分間の4種を飲み比べてみる。

左から右にインフュージョン葉、インフュージョン枝葉、ボイル葉、ボイル枝葉。

色は、この写真ではわかりずらいが左から右に濃くなる。

テイスティング評価

処理方法 部位 評価
インフュージョン 青い溶剤のようなアロマ、草を食んでいるフレーバーで刺々しさは無いが飲むのきつい
インフュージョン 枝葉 葉だけより穏やかなアロマ、まろやかでバランス良いフレーバー
ボイル お茶の様なアロマ、フレーバーは草の溶剤感が残っている
ボイル 枝葉 ウッディでしっくりくるアロマ、よりお茶のようなフレーバー、全然飲める

この結果から、ボイルにすることにより葉から抽出されている溶剤感は揮発することがイメージ出来た。
しかしボイルをしてしまうと、枝部位から抽出されるウッディさが強くなりすぎてしまう。
と言うことで、枝葉をスティーピングしてボイル時に投入するという手法をとることにした。

こちら本番スティーピング。
1700mlのお湯80℃に2時間スティーピングした。トドマツの投入量は23g(体積表現ができず申し訳ない)。

ティーピング完了品。色がピンクとオレンジの中間でなんか良い色。

これを醸造のボイル時に投入するという手法で行く。

レシピ



バッチサイズ 11ℓ
モルト % ホップ g@m
ピルスナー 100 コロンバス 7g@60m
シトラ 20g@0m
SRM 3.8 IBUs 22.6

使用するイーストは本当はラガーにしたかったけど、北欧リスペクトでクベイクを使うことにした。

こちら完成品。

色はいいね。インフュージョントドマツの程よいピンク感が出てるかな?
アロマはクベイクのニュートラルでおとなしいアロマ。トドマツの溶剤感はない。
フレーバー。全体的に旨味が強くてシトラとあいまって果実感がある。トドマツは後味に仄かに存在感を主張する。
ボディーはミドル。なかなか旨いかも。

うーん。美味しいけど、もう少しトドマツ感が欲しかったか?
そう考えると、しもかわブルワリーさんのピルスナーのトドマツ感のバランスっていいよな~。
おもしろい。また機会があればマツ醸造してみたい。

以上。